関空の朝

朝の関西空港。
旅のはじまりなのに、ぼくは小さく立ち止まっていた。
変換プラグ、これで合っていたかな。
売り場のお姉さんが、やさしく言った。
「Aタイプで大丈夫ですよ」
そのひと言で、
旅の朝がすこしやわらかくなった。
ホーチミンの街
飛行機は海をこえて、ホーチミンへ。
外に出ると、知らない街の空気がすぐにまとわりついた。
少しだけ、市内へ出てみる。
市庁舎。
工事中のノートルダム寺院。
時間は短い。
でも、はじめて見る街は、
急ぎ足でもちゃんと心に残る。
タクシーの急展開
タクシーの運転手さんは62歳。
翻訳アプリを使いながら、にこやかに話してくれた。
けれど、空港へ戻る時間が近づいて、
「急いで」と伝えたあとのことだった。
車は急に、映画みたいになった。
逆走。
急ターン。
流れる景色。
ぼくは黙って前を見ながら、
無事に着いてくれ、とそれだけを思っていた。
夜の移動
なんとか空港へ戻り、
そこからまた、国内線に乗りつぐ。
朝は関空にいたのに、
まだ同じ一日のなかで、
もう別の街へ向かっている。
旅の日は長い。
でも、ときどき一枚の紙みたいに、
するりと折りたたまれていく。
ダナン到着
夜のダナン。
ホテルのフロントで、笑顔を向けてもらった。
それだけで、
肩に入っていた力がすこし抜けた。
朝の親切。
昼のざわめき。
夕方の緊張。
そして、夜の安堵。
旅は、遠くへ行くことだけじゃない。
心の置き場所が、何度も変わることなのかもしれない。


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